Q18 人工皮革はレザーですか、織物ですか? どちらのサンプル帳にも載っていますね?
質問例: スエード調の商品を探しているのですが、レザーにもテキスタイルにも似たようなものが掲載されていますね。 違いがあるのでしょうか? 同じ色でも番号が違います。
Answer: 同じ品名で、同じメーカーの同じ商品です。 番号が違うのは、倉庫の取り扱いルートが違ったり、お客様がテキスタイルからかレザーからか間違えないようにするためのポカ避けでもあります。 人工皮革の構造上、どちらも該当するので、片方だけに掲載するのも問題があります。
人工皮革とは、皮膚の構造や機能を人工的に作り上げた物をいいます。 家具の分野では、スエード調を指すことが粗100%です。単純に見た目だけを似せた、塩化ビニルやポリウレタンフィルムを張ったレザーと、構造的にも機能的にも異なれば、また、製造工程も全く異なります。 一般に、人工皮革は、ブランド品で高価格であり、その理由もしっかりしたものです。 特に家具用は、見た目は靴や手帳、服飾と違い、耐久消費材につかわれる資材として丈夫に設計されているので、さらに高価であることは言うまでもありません。
見た目では、本革で言う一番上の層である銀面を擦りとったスエード調で、ポリウレタン樹脂を含浸させた物を言います。 銀面は、例えば、今ご自分の手の甲を見ていただいて、シワがあったり毛穴があたりしていますね。 これが銀面で表皮層のことです。 これを完全に擦り取ると、スエード(繊維層)になるわけです。 ウレタン樹脂を含浸させていない物は、単なるニットの起毛品で廉価品(安物)となります。 ニットの起毛はクタクタになるのが早いので、ソファや椅子では余り好まれていません。 ビーズクッションがそのうちに伸び伸びになって、クタクタになるような感じですね。 そちらは、縫いぐるみや手帳で使うのに良いでしょう。
人工皮革に、ポリウレタン樹脂で出来たフィルムを張ると、フィルムが銀面の層の役割となり、本革の構造に近づきます。 ランドセルなどで有名なクラレさんのクラリーノなどは有名なブランド品になるので、なじみが深いでしょう。 ランドセルのような銀面を貼った人工皮革は、家具ではルックスが好まれず、弊社が販売して幾度も失敗しています。 そうして、家具業界では人工皮革=スエード調を指すようになっていると思います。
人工皮革の作り方は、ベース作りから。 嘗て、カネボウさんが存続していた時は、マイクロファイバーニットで製造していたこともありますが、今は不織布ベースと考えていいでしょう。 不織布は、マイクロ短繊維(1gで9000m+以上できる繊維を数センチに切った非常に細い繊維群)を、まとめて、巾をだして面積に仕上げます。
方法1 大昔から毛でフェルトをつくるときは、針が沢山ついたブラシで叩きつついて纏めますが、これをニードルパンチといいます。 現在は、機械的に高速でカード状(巻き取れる状態)にされた綿を叩いて、必要な厚みと重量に仕上げます。 東レさんのエクセーヌやウルトラスエード、アルカンターラの商標で採用されている技術です。
方法2 弊社の人工皮革ラムースで採用していたり、近年、生理用品やおむつ等でも、より効率的かつ工業化された不織布では、ウォータージェット法があります。 カード状にされた綿に、上から高圧の水のシャワーを当てて、絡ませる方法で均一で効率よく不織布が出来ます。 針で叩くか、水で編みこむように絡ませるかの違いですから、やっていることは同じです。
椅子用では、どちらの方法も、別途作られた不織布や織物を真ん中に挟み込んで、引裂き強度のアップをはかってます。 より安い服飾や靴などに使われるものを代替すると、子供がソファの上で飛んだりすると、簡単に引裂けてしまいます。 クリーニング店さんの人工皮革の説明と最も違うのは、椅子用では、この中央の不織布や織物が加えられていることです。 衣料、手帳、靴、鞄と商標が違っていても、中身が異なるのです。 中央に入る不織布は、スパンボンドと呼ばれる副資材で、単体では椅子の裏に使われている目隠しで安価なものですが、短繊維をボンドで固めているので丈夫です。 ただ、摩擦で毛羽立ってくるので、表に触れる部分に使うのは問題です。 カラーボックスに入れるスパンボンドの不織布ボックスは感心できない使い方です。 毛羽だらけになり、見た目だけでなく、ほこりがついて、アレルゲンの巣になるのが心配です。 安ければ良いという風潮で、バイヤーさんが採用して量販店で売るのはどうかと。。。 話がそれました。 織物を中央の層にして、上下を短繊維を絡めて不織布構造と織物のハイブリットにするのが一番理想なわけです。 ラムースはまさにこの構造です。
其々の不織布が巻き取られ、次にウレタン含浸の工程に送られます。 ウレタン樹脂は、多孔層かつボンドの役割も担い、コラーゲンのような役割となり風合をより本革に近くできるのです。 そして、家具用は耐久資材ですので、服飾や靴などと違い、簡単に加水分解しない高価なポリウレタン樹脂が使われます。 この辺も、クリーニング屋さんのホームページで説明している劣化が早いとか、本革よりもたないとか、一色端に誤解されますが、全く性能が違い丈夫です。 日本製のランドセルは丈夫でしょう? 家具用も日本製なら丈夫です。 日本製が何よりも安心なのは、この劣化しにくいウレタン樹脂を含浸させるのは技術とノウハウの両方が必要で、それを数百万メートル均一の品質でつくることが出来ることです。 理論が理解されていても、製品にするのとは大きな違いがある分野の一つなのです。 仕上げに、起毛して染色する工程が入ります。 家具の人工皮革は、本革の銀擦り=スエードを構造的に真似たもの。 まさにレザーです。
説明の通り、材料の殆どを占めるのがマイクロファイバー繊維。 まさにテキスタイルです。 繊維がコラーゲンの層の役割を持つのです。 作っているのは、本革の銀面を擦ったスエード調。 まさにレザーです。
そこで、両方のニーズがあり、両方のサンプル帳に乗せているのです。 椅子には、レザーのデザインが似合うもの、テキスタイルのデザインが似合う物、両方いけるものがあるのは事実です。 どちらのアプローチであっても、的確にニースにお応えしたいという思いで、両方のサンプル帳に乗せているのです。 是非、高品質でカモシカのようなスエード、シンコーのラムースをご用命下さい。
解答者:矢追社長