プロの目Q&A

Q20  チップウレタンの扱いがありますが、どう使うのですか? チップウレタンってなんですか?

Q20  チップウレタンの扱いがありますが、どう使うのですか? チップウレタンってなんですか?


Answer:  現在では当たり前の様に使用されているチップウレタン。 ネットでも多くのソファメーカーが説明文を載せていますので、元となる文章やその出所が我々であったり、同じであるので、ここで説明するのは無駄ですから、我々は椅子資材のプロ目線で話をしたいと思います。

チップウレタンを簡単にいうと、コイルバネのクッション性を確実かつ安定的にだし、安価で、しかも誰でも簡単に作業できるクッション材です。 チップウレタンは、細かくちぎられたウレタンの塊。 各業界でつかう緩衝剤等のウレタンの端材を、一定の大きさに粉砕し、ボンドをたっぷりつけて、圧縮して固めて四角い塊(パン状)に仕上げます。 廃材利用であっても、ヘタリにくい優秀さを兼ね備えています。 ボンド量や圧縮した状態で固着して塊にするので、ウレタンとはいえ、かなり重い物です。 これを用途にわけて、厚みを変えて畳状に切り出して保管します。 椅子の大きさに切り分けた後、さらに中央の加重がかかる部分などに、それを重ねるようにボンドでつけて、椅子の容を考慮してクッション材として仕上げます。 圧縮するのに加え、粉砕された個々のウレタンの固さが異なること、また、それぞれの加圧方向が違うことで、ウレタンの欠点であるヘタリがすくなくなり、椅子用途にとてもマッチしています。 固さは、椅子ソファですと、60‐80が一般的で、数字が大きい程固くなります。 厚みや椅子の角度でも圧のかかり方がかわるので、椅子にした後のすわり心地は、60であっても固く感じたり、80であっても柔らかく感じることもあります。 あまり数字に拘らず、実際のすわり心地で判断するのが本当のプロの仕事だと思います。 チップウレタン単体では、表面にごつごつが現れたり、色がブルー系なので、その色がうっすらと椅子の表面に出てしまうこともあり、一般的には、チップウレタンのトップには白いウレタンペフをボンドでつけて使います。 チップウレタンも厳密には点では固さが多少異なるので、白いウレタンはこれも緩和してくれますよ。 白いウレタンは、家庭のウレタンスポンジの薄くて大きい物を想像してください。 10㎜、15㎜、20㎜、30㎜など用途を使い分けます。 薄くてもゴツゴツ感や透けることは防げますが、アールのきつい形状のソファなどでは、厚みをあげないと、チップウレタンの容をひろうことがあるので、厚みを上げたものを選びます。 *どれも弊社で在庫していますので、表面材と一緒にご注文下さい。

チップウレタンは、ソファだけの資材ではありません。 木のチェアーでも当たり前に使用しています。 1cmや2cmの厚さのチップウレタンを、座面の板の中央に置き、ペフ(白いウレタン)をその上に敷いて、其の上を巻くようにレザーやテキスタイルの表面材を、座板や背板にタッカーで打ち付ける。 そして、不織布で裏面を隠す。 ごく当たり前に使われています。 学校の折りたたみ椅子では、チップ無の白いウレタンだけのものが在ります。 すわり心地は、家庭の椅子と比較したら、あまり考慮されていません。 業務様のおもてなしの椅子は、今では、合板の中央をくりぬき、弊社のプラヌーバルという布状のバネをタッカーでうって、其の上にチップウレタンを敷きます。 劇的にすわり心地が変わるので、海外の安価ものに対抗する手段として重宝されます。 (鉄バネは、薄い座面では厚みが出てしまい無理です)。 板なのにバネがある、そんな夢のような素材で革新をおこしているのが椅子業界ですから、決して椅子は斜陽産業ではありません。

ソファでは、コイルバネは作業性が悪いし、すわり心地を熟知していないと、ただ取り付けただけでは、製造する全部のソファが合格点のすわり心地になりえません(ロット差がでる)。 ソファごとのバラツキが大きく、職人さんの技のバラツキもでてします。 チップウレタンは、殆どのケースで、ウレタン加工所にサイズ指定するとカットしてくれますので、座板の上においても良し、テープで張り巡らした(バネ効果)の上においても良し、勿論、板バネの上においても良しで、非常に簡単に平均合格点の高いソファが作れます。 当たり外れの少ないソファができますから、量産には持って来いですし、日本人の感性にもあっていいると思います。 職人要らず。 嘗ては、職人殺しだったでしょう。 今は、職人さんも当然の様に使っている材料ですが。 製造工程が短縮され、製品安定されますから、生産性向上で職人さん不足が解消されてきた面もあったと思います。

チップウレタンの原材料は、電気製品や車両で使うウレタンの端材であるクズウレタンであることは事実でしたが、近年では日本からあらゆる製品の製造が少なくなり、材料のクズウレタンの数が足りません。 したがって、チップウレタンを作るために、ウレタンをつくり、それを粉砕してボンドで固める例も多くなりました。 決して安い再利用品ではありません。 また、安価でつくっても、ウレタンは非常にかさばるので、トラックに乗せられる量がしれています。 このため、運送会社の運賃が高く、利益がでないので廃業や取りやめが相次ぎました。 現在のウレタンは値上を一層しないと業界が守れない状態だと考えますから、チップウレタンも劇的な機能性を付加するなどの時代になっていると思います。

チップウレタンは、椅子職人の技の一部を無用にした素人化商品という側面を忘れてはなりません。 椅子業界としては、職人でなくても加工できるので、作業員を雇えばライン作業ができる、工業化に欠かせない大きな革命的素材だったと思います。 タッカーと同じで、作業性改革でもあったわけです。 椅子は昭和を通じて工業製品化され、平成ではネット販売やニトリさんなどのSPA販売で、安価でも、誰がかっても、そこそこのすわり心地が担保される様になりました。 しかし、一生使う家具ではなくなってしまったのが寂しい限りです。 時代が変われば、今流行りだったり、当たり前な物も廃れていくのでしょうが、チップウレタンの質問を受けるたびに、そんなことを考えながら、とても機械的な説明をしています。 チップウレタンの効果を上げるには、弊社イズライフブランドの大型新商品であるプラヌーバル(布バネ)の組合せは最強だと思います。 ネット販売の物でも、値段競争だけでなく、より快適な椅子やソファが世の中で求められる、次の時代の幕開けではないでしょうか。

*Qなぜ、海外製の安価なソファのウレタンは直ぐヘタるのか? A1、ウレタンチップが高く、あまり多く使っていない。 バネも使っていないこともあり、ダブルでダメな例も。 A2、ウレタン技術が安定してない。 木型に材料を流し込んで、棒でかき回してウレタン生成させているようないい加減な作り方で、発砲具合が毎回違う海外工場を彼方此方で見ています。 A3、安ければいいという考え。 中身が見えないソファでは横行していると思います。 安物買いの銭失いという商業施設のオーナーさんの声があるのは事実です。

解答者 矢追社長

TOP