プロの目Q&A

Q21 ヨーロッパの輸入レザーの中で

Q21 ヨーロッパの輸入レザーの中で、不織布を裏に貼ったものがあります。 意匠性が気に入っているので、採用しましたが、1年もしないうちに伸びきってしまいました。 商品に問題があるのでしょうか。


Answer: 弊社では、きちんとした理由があってヨーロッパレザーの採用はしていません。 したがいまして、弊社の商品ではありませんが、お困りでしょうですから、下記を参考にして、輸入元か購入先とクレーム対象である旨でお話し合いができるか検討してください。

弊社がヨーロッパレザーを採用しない理由:

椅子用途のレザーで、裏にニットに使用しない代わりに不織布だけを張り合わせたレザーでは、短期間で確実に伸びきってしまいます。 従来のニット使用のレザーと比較して、明らかに商品寿命が短く、採用検討の土俵にものらない商品です。

表面の樹脂部分についてですが、ヨーロッパでは環境規制をたてに中国等の外からの輸入品が入りにくくしています。 塩ビレザーの樹脂に添加する化学品に対し、様々な規制をし、対応品が出てくると更に複雑化して、コストがかかるイタチゴッコの仕組みです。 ヨーロッパが規制対象とするものを添加すると、実際、高品質になり、長期に使用可能になるにも関わらずです。 そうした添加物が規制されると、商品のライフサイクルが短くなり、逆に環境負荷が高くなるという現象が起きてしまいます。 日本では、レザーは本革や布よりも高耐久で長く使えるのに対し、ヨーロッパでは安物だから低寿命で良いという考えが影響していると思います。 そうした環境で保護されているレザーを、そのまま日本で使用することに無理があるとも考えられます。 日本とアメリカの化学品規制に関する考え方は似ていて、長い歴史のある塩ビ商品については、過去に問題が無かったから大丈夫だという見地です。 石油由来の樹脂の中において、特筆すべき寿命の長さで環境に優しい樹脂であると判定しており、環境に優しいとはっきりうたっています。 日本のレザー工場とちがい、ヨーロッパのレザー工場は町工場の規模が多く、材料の調合などは材料メーカー任せになるため、日本向けに必要な細やかな品質改良がしにくいというデメリットを背負っています。 我々が樹脂につかう化学品について話をしても、判らないと答えるレザーメーカーが殆どです。 弊社がヨーロッパレザーを採用しない理由は、現場が対応できないレベルであることに集約されます。

不織布についてです。 塩ビは熱可塑性樹脂で、あたたまると伸びる、冷えると縮む特性があります。 この収縮性だけで、元の容にもどるかというと、そうではありません。 型に入れて焼いたクッキーと違い、棒で伸ばしたクッキーの生地をイメージした方が正しいでしょう。 しかも、工程上、タテの一方向に引っ張って作るので、ヨコ方向の伸びについては、戻りにバラツキが出てしまいます。 これを助けるのが裏のニット生地です。 ニットが無ければ、伸びた塩ビは直ぐに戻りません。 人の座るひざ裏を中心に伸びていき、やがて垂れ下がり、その内に弛んだ部分から切れてしまいます。 不織布は、ニットに比べてはるかに安く、工場ごとのバラツキも少ないので、どこでも手に入り、コストコントロールがしやすい。 ヨーロッパでは、レザーが伸びて、切れても、仕方ないでしょ、安物だから!のつもりです。 日本で流通させるには大変問題です。

意匠性についてです。 日本では、半年や一年で、汚れが目立つだけで張替えろ!というユーザーさんがいます。 レザーの表面の高低差が大きい(形がはっきりした)デザインでは、細い溝部分、低い部分に汚れがたまり、汚く見えてしまいますので、明るい色が中心の商品では採用しない方針です。 余計に、ヨーロッパデザインが新鮮に見えると思います。 同じ様な意匠のものが日本で作れないわけではありません。 別注で300m単位で受注しています。 デメリットを理解していただいて、お客さんの責任の範囲で使用を決められていると思います。 レザー分野でも日本は群を抜いて高度な商品づくりをしているのです。 是非、意匠性で困っていたら、別注についてご相談下さい。

解答者 IDC(株)

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