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Q31 無水エタノールで、消毒用アルコールを作りたいのですが。

Q31 無水エタノールで、消毒用アルコールを作りたいのですが。


Answer: 無水エタノールは、消毒効果ゼロなんです。 アルコール消毒は、界面活性、つまり、油にも水にもなじむ性質を利用しています。 親油基と親水基の両方を持たせるために、水で薄めないとなりません。 弊社は、実用性の高い、耐アルコール試験方法を開発しており(ビニルレザーの耐アルコール性能試験法 公開番号2016-114565)、自社で無水エタノールを水で希釈して、多くの種類の濃度で試験をしております。

水1:無水エタノール1で薄めると、化学的には濃度が、エタノール70%、水30%になります。 そこで、消毒効果が、およそMax(常温時)で、もっとも短時間で殺菌します。 (1:1で薄めるのに、70%と30%になる理由は、下記に説明)

*エタノール消毒やアルコール消毒は、通称であり、正確な化学用語ではありません。 それが原因で無水エタノールで消毒できると勘違いしやすい。

*消毒用アルコールは、エタノールと水を混ぜたものが一般的です。 エタノール濃度がおよそ70%で殺菌力が、最小時間で、最大効果と覚えて結構です。 80%のモノがあっても、エタノールが揮発するので、使用時に70%を下回っていなければよいでしょう。 また、仮に50%まで濃度が下がっても、その分、消毒時間が長くなれば同様に殺菌します。 心配しないで下さい。

*なぜ、水が必要か? エタノールC2H5OHの成分は、疎水性C2H5と親水基OHの両方を持ち合わせています。界面活性が起こり、およそ、水と油の表面張力を変えて均等に釣り合わせます。 水を弾くウィルスや菌が、この親水基を受け入れてしまい、成分の炭化水素が細胞膜の中に入り、細胞の中を破壊する効果を発揮するのです。 界面活性を活かすために水が必要なわけです。 エタノールと水の量が1対1なのは、Mol数では7:3にするためです。 液体の量で、1対1にすると、C2H5のMol数が約46mol. H2OのMol数が約18molとなり、丁度、エタノール70%、水30%の消毒液が出来るという計算です。 ペットボトルの半分に無水エタノール、残り半分に水を入れると完璧なわけです。 尚、この消毒液が細胞を破壊するメカニズムについては今もって所説あるようですが、一つの正解ではなく、数種類の殺菌メカニズムが存在しているとも考えられています。 菌やウィルス毎に、細胞を破壊する方法が違うということでしょう。

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