Q12 テキスタイル(布)の裏表が判らない!
質問例: 御社のサンプル帳商品は、中表(なかおもて:巻の内側が表で、外側が汚れてもいいように裏)ですが、お客さんが気に入ったとかで、どこかで買ってきた薄い生地がどっちか裏かわからない。 無地だから、どっちでもいいか?
Answer: 支給布の場合は、椅子張りでないことが殆どで、厚みがなく薄いですね。 確かに見分けるのはプロの目が必要ですね。 まず、薄い場合、衣料かカーテン様の生地ですね。 衣料の布の多くは、巻いてある状態で外表です。みえている外側が表。 反物の状態で、柄が見れられる、変化が見られることで、縫製加工所で違うものを作らないミスをなくす改善活動で、このようになったのでしょう。 外表は、特に、プリントに多く見られます。硬く巻かれるので、広げて確認するのは都合が悪いのでしょう。
反物のプロは、裏から見ても何の商品かわかるのですけれどね、縫製加工所では中々気が付くのが遅い。 また、中に中表か裏表か表記があるか確認してください。間違えやすいものは、表記があることも多いのです。
次に、ピンの跡です。 反物のヨコの使わない部分を耳と呼びます。 耳は、織る時にヨコ糸を止める役割があり、通常は平織でキッチリ糸が抜けない様に織り止めします。 また、加工中はこの耳の部分をグリップしてテンションを掛けるのです。 このテンションを掛けないと、中央がたるみヨコがたわむので、ヨコ方向の柄がまっすぐにならず、湾曲してしまいます。 結果、加工中のテンション不足は、曲がった柄の織物になってしまいます。 グリップといっても、手でつかむわけではなく、ピンをひっかけて、加工機の中へ流していきます。 加工中は表を上に向けいますので、ピンは下から刺さります。 つまり、裏側から表にかけて、耳にピンが打たれる。 このピンのこん跡で判断します。 ピンが刺さった方がとがってますから、横の耳で尖ったピンの跡がずっとあれば、尖っている側が表となります。 へこんでいる側が裏です。
それらピンマークが無ければ、どっちでも良いということで好きにしてというアドバイスもあるのですが、椅子張りの設計でありえません。 表の強度を上げる為に、糸だけでなく織り方にまで強度を計算して設計していくからです。裏側の組織は表と違って、甘くなることがあります。 つまり、必ず設計者の意図が隠されているのです。 そこまでやってるのは、名古屋のシンコー(弊社)だけというのは有名ですが。
でも、これ、イスの世界だけですよ。 耐久性が要らなければ、どっちでも良いわけですからね。 外資系のホテルではたまに、物性的に持たない様な織物で椅子を張り上げていたり、某有名小売店でも、私どもではとても合格出せない織物で張っていますし、現に、ものすごい数が売れているので、消費者も安いから納得していると言い切っていますよね。 1年でボロボロになっても、文句をいう確率は少ない、氷山の見えないところは、見えないで良いという変な確率論まで出る有様で、我々の品質管理に対する考えと全く次元が違うのですから。
例えば、代表的な綾織は、右肩上がりに綾を作るのですが、綾の部分が糸が飛びます。 (イスでは、その分の耐久性は糸の撚糸回数を上げるなど工夫しますが) 糸を飛ばしても立派にあげるには、密度を上げる。 つまりコストがあがり、良いものは高いとなります。 ところが、これ、裏の組織は結構かっちりした風に見える(見えるだけ)のです。 そこで、裏を表として使って、密度を減らす。 これ衣料の安物で多くみられる手法ですね。 見て下さい。 裏を表として使うので、逆の左肩あがりになってます。 衣料では、なんでもありですね。 それですぐ破れるわけではないですし、衣料はクタクタになる方が早いので、皆さん買い換えますね。 その場合、安い短い繊維を撚糸した糸なので、洗った後に糸は硬く、硬いのになにかクタクタっていうことに。 イス様のテキスタイルは、真面目な会社にしか保証できませんね。 自分で設計して、検査する。 これがブローカーとの違いです。
解答者: IDC株式会社 開発担当