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Q35 フタル酸を使用していないレザーはありますか? フタル酸以外の商品は問題がないのですか? フタル酸は禁止物質ですよね。

Q35 フタル酸を使用していないレザーはありますか? フタル酸以外の商品は問題がないのですか? フタル酸は禁止物質ですよね。


Answer: 大きな勘違いですが、勘違いが蔓延している近年の代表例がフタル酸ですね。 買い物袋の殆どがポリエチレン系なのに、ビニールという名称が故に、塩化ビニルと勘違いしているのもそうですが、ネット社会になっての勘違い、トホホが多いこの頃です。 誤解をしている人に、トホホを説明するのは、非常に体力のいる仕事ですので、把握できる要素を説明しておきます。

フタル酸はどんな役割か。 塩化ビニル樹脂は、塩が60%も占めるカチカチの硬い樹脂で、其のままでは、整形加工できません。 また、塩ビレザーとして柔らかい用途への発展もできません。 加工中も、その商品の使用中も、柔らかさを持たせるのが条件となります。 塩化ビニル樹脂を柔らかくする材料が、可塑剤(かそざい)となり、フタル酸はその可塑剤の中でも塩化ビニル樹脂と抜群の相性があり高耐久、高寿命が担保できる材料です。 塩化ビニル樹脂は、熱可塑性樹脂といって、熱をかけると柔らかくなり、冷えると固くなります。 塩化ビニル分子間の距離が短いがために硬く、可塑剤は、その間に入って塩化ビニル分子同士の距離を広げることによって柔らかくなります。 温度によってこの可塑剤の機能がコントロールされて、熱で柔らかくなったり硬くなったりします。

まず、フタル酸は、体内に入らない限り、何の影響もないという前提があります。 世の中は、口から入ると問題のあるものばかりですが、利点が勝り、人々は危険度を勉強し使用し続けるわけです。 例えば、カラースプレー。 カラースプレーを口内に吹けば問題ありそうですが、紫外線や錆や劣化の防止として、鉄類だけではなく、コンクリートにも、プラスチックにも、そこら中、色なり無色なりでコーティングされていますね。 定期的な塗り直しも当たり前にしないとなりません。 家屋で10年でしょうか。 1度塗れば10年も、あの破壊力の強い紫外線から防御でき、強度劣化もなく長く使えるのですから、ロングライフ=環境にも優しいわけです。 酸化もそうですね。 遊具などの鉄類は定期的に色付けされますが、酸化防止と紫外線防止です。 乾燥するまえに舐める勇気のある人はいないと思いますが、当然、乾燥したペイントに触ったところで、問題は起きませんし、メリットだらけで放棄する人はいません。

可塑剤も、その分類の中のフタル酸も同様です。 塩化ビニルを加工する時も、また、柔らかい質感を持たせるのに必要な材料です。 塩化ビニルと相性が良いフタル酸は、30年つかってもレザーの品質に問題がでない、結果的に、椅子が長い間使える、椅子にとっては頗る良い素材と言えます。 特に家具用は、ロングライフように相性の良い可塑剤として、フタル酸が選ばれ使用されてきました。 使い切り仕様のプラスチック類と全くことなるのです。 そして、塩化ビニルは、石油由来が40%で塩が60%ですから、製造中のエネルギーも他のプラスチックより30%も低い。 そんなプラスチックが他にありません。

そもそも、世界中で禁止されている共通のフタル酸自体ありません。 EUには、RoHS2で4種類のフタル酸エステルが用途別の規制物質に入っています。 DEHP、DBP、BBP、DIBPです。 RoHS2においても、家具と言う分野では、口に入ることがないことから、使用中の危険性が一段と下がり、規制されておりません。 アメリカと日本の共同研究の結果、環境ホルモン因子と認められる結果がでなかったのですが、げっ歯類では可能性が残っため、念のために口に含むケースを想定し、子供用玩具または育児用品だけに規制されています。 使っていて、触って体内に取り込まれる問題がでるものでもなし、空気中に揮発していくにしても、微量すぎて人体に影響がでないことから、当然の規制の仕方なのです。

闇雲に、フタル酸を使っていないのが差別化のように扱うのは聊か真実を曲げていないか、ethicsの問題、コンプライアンスの問題があるように思えます。 不要な環境対応による環境悪化の速度を早めていませんか? フタル酸の代替品はいくつかありますが、それらこそ、世界中で長い間使用して、実践での安全性が担保されていない化学物質ですから、家具のロングライフという本質を考えて頂きたく思います。

そうは言え、レザーのプロとしての当社。 規制されていないフタル酸類の商品群やフタル酸ではない可塑剤を使用したレザーも多種品揃えしています。 お客様のニーズに合わせて、レザーを提供しています。  サンプル帳では、RoHS2対応は、6+4と書いたロゴがサンプル帳に記載されている商品全てがあたります。 ノンフタルに関しては、それでは、どんな化学物質でPVCを柔らかくしたのか、その材料が世の中で使用されている歴史が何年あるのか、むしろ、そちらの確認と、ご自身で張られた椅子を中長期で継続的に監視観察することをお願い致します。  塩化ビニルの間違った認識を改めないとなりません。*注釈1

注釈1 ビニールは燃やすとダイオキシンが出ると、1990年代に有名キャスターが○○ステーションという所で取り上げて、塩化ビニル業界は、販売に苦労する大変酷い目に合っています。 ビニールはポリエチが殆どであり、そもそもポリエチは塩素をもっておらず、燃やしてもダイオキシンが出ません。 また、塩素を含むものを低温で焼けば、ダイオキシン発生条件が整います。 つまり、家庭のコンロ程度の温度で、塩分を含むものを燃やすと、ダイオキシンが発生している可能性があり、口にしているわけです。 当たり前ですが、世界の健康機関で食べるために焼く行為で発生するダイオキシンは微量で、許容範囲内と認められ、皆が肉や魚、味噌を焼いて食べているわけす。 世界中が、多くの肉や魚を生で食べる衛生環境など極わずかですから、焼くという利点が勝わけです。 塩素は、肉や魚にあるものですから、ニュースのキャスターのとんでもないという類のコメントを聞いて、この人何を言ってるの?と科学を知る人が同時に思ったことでしたが、そこから、瞬く間に、塩化ビニルをつかった商品の非買が発生するなどをし、十年以上もかけてようやくあれは誤解だったとなりました。 流布した当事者不在で、今もってストローが環境悪化だという報道を堂々としています。 注釈2 焼却炉の温度を上げる法改正があり、生ごみ等からでるダイオキシンは出なくなりました。 学校の焼却炉などの周りは、ダイオキシンが長年で累積していましたが、これらの解消につながり、これは良かったことだと思います。 ストローは良くない!と言っている人が、プラスチック袋に梱包された食材を難民キャンプで配布しているのをみて、おいおい!衛生上プラスチックが無いと食料の多くは駄目だって宣言しないのか?という思いは多くの人々が思っていることです。 ストロー業界には気の毒でした。

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